吉村昭の歴史小説
吉村昭が得意な逃亡もののストーリー展開になっている。
襲撃の指揮者 関鉄之介を主人公に幕府に水戸藩が追い込まれる状況から、井伊直弼の襲撃、その後の水戸藩士の逃亡までを描かれている。
第三者が淡々と記録しているような感覚で読めて、講談っぽさがなく、資料重視のような歴史小説として楽しめる。
特に、水戸藩と彦根藩との軋轢、水戸藩の急速な改革による旧体制はと改革派の確執など、桜田門外の変に至る原因が事細かく描かれていて勉強にもなるし面白かった。
徳川斉昭が幕府に追い詰められてもう限界だろと思われるところでさらに追い詰められていく様子と、斉昭に恩義を感じる改革派の藩士たちの悲痛さがひしひしと伝わってきてのめり込んで読んでしまった。
また、井伊大老襲撃時の雪の中を大名行列見物に紛れての襲撃偽装、や実戦経験のない藩士たちの拙くても必死の戦い方がよく表されていて映画やドラマを見ているような感覚で読めた。
桜田門外の変後の彦根藩の転落ぶりと、襲撃した水戸藩士たちの逃亡劇。
特に、糖尿病を患っている鉄之介の体調のことがよく描かれていて、鉄之助が最後に尿意を必死にこらえるシーンなどは読んでいて、尿意を感じるような感覚に陥った。
逃亡劇においては、鉄之介 に路銀を渡して、必死に逃亡の手伝いをする人々が次々現れていて、当時の人情というかリスクを冒してまで縁のある人を必死に匿う様子は正直言って現代に生きる私にはあまり理解することができなかった。
追ってをするするくぐり抜けて逃亡を続ける様子は、読んでいてこちらも捕まるか捕まらないかの状況に追い込まれているような錯覚がして面白い一冊であった。
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